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2009年10月17日の1件の記事

2009.10.17

少年と餃子

おおらかでたくましくて、そして優しい心の持ち主。そんな彼は人一倍の食いしん坊で身体のひとつひとつの細胞から”美味しいものが大好きなんだ!”みたいな叫び声が聞こえてくるのであります。

ちょっと知らん振りをしつつも、身体がそういってどうしようもない彼は餃子の近くを回遊します。そして親の目を見ては、口ではなく細胞でこう言い合うのです。

”ねぇ、お父さん、僕は餃子が大好きなんだ”

”アホか、おまえさっきも食ったやないか!みんなも食べたいねんからもう少し我慢せぇ!”

”いやだよ、お父さん!だってみんなは知らん顔して仕事してたり誰かと話していたりするじゃないか!僕は餃子が大好きなんだよ”

彼はすでに2回ほど食った後のこと。これを食べれば3回目となります。大人たちは遠慮を知ってますのでとことん知らん振りがうまいのです。でも、彼は自らの細胞に嘘がつけない。お父さんは観念します。

「ほら、これ食べなさい。おいしいか?」

Ts380168「えぇっ?う、うん!」

こうして商談成立。(@いきつけのバイクショップにて。少年の名はホンダワールド2号)

この餃子、何を隠そう僕が10代の頃に勤めていた中華料理店のものです。そう、社会人デビューの父であり、料理人としての師であるかつての【新大蓮】(茨木)の手作り餃子。

手作りって当たり前と思われる方が多いでしょうが、この世の多くの中華料理店(ラーメン店も含む)の餃子はPBです。ま、下請け業者に製造依頼しているわけです。それが悪いわけじゃないけど、やはりそれでは画一均質の味となってしまいます。もちろんマニュファクチャリング餃子はウマイのでついついライターのような職業の人でも騙されてしまうわけです。

【新大蓮】の店主を我々若い衆(もうみんなおっさんだけど)はチーフと呼んでいました。当時はショートアイパー姿で肌身に白衣。ロンピーを吸っては目を細めているので一見は筋者のようです。

しかしひとたび口を開くと、その90%が女の話ばかりで、暇になると「女子高生いつでもつれておいでや」というような、本当に鼻の下がふにゃふにゃになる人でした。さらには世間のおばちゃんどもにこき使われるような、完全に尻に敷かれるタイプでして、そういうパワーバランスからいつしか大将とか旦那さんとかじゃなくてチーフと呼ぶようになりました。

今のような「こだわり」というキャッチコピーがない時代。職人は嘘をつけない人ほど寡黙で、それを肌で感じることで信頼していた客で成り立っていたあの時代です。

チーフは毎日毎日、午後の3時頃になると6~7個のキャベツを切り分け、ニラやタマネギ、ごま油、しょうゆ、豚ミンチなんかを混ぜ込みながら、薄い皮に包んでいくのであります。もちろん、こんな仕事は店全体の仕込から見ればほんのわずかでしかない。小さな店ですからおんぼろトイレの掃除から、グラビアページが食べ零しの油で固まったエロ漫画の整理、壊れてしまらないレジの管理、黒電話に張った出前先のメモの確認など、もうわんさかと仕事があるわけです。

Cci200910170_00000

そんな長い長いマラソンのような一日の中に、餃子の仕込があります。僕などはまったく職人の域には達していませんので、仕事はとてもへっぽこです。それでもチーフの横で包みまくった体験は、今となっては黄金色の思い出です。

ライターたかが10数年で思うことですが、やっぱり言葉は所詮10%程度の情報伝達でしかない。いくらブログやウェブが発達しようが、それ以外の90%は伝達不可能です。ひと言で言えば感性の世界。それはリズムであり、音であり、生き物の呼吸のようでもあります。

現在、チーフはいろいろあって店を閉めて他の仕事をしています。その一方で餃子だけこのようにひっそりと売り出しています。ネットのことなど知る由もありません。どうやら娘さんがアテンドしているようです。http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d97353896

みなさんもよければ一度ご注文ください。

”ウマイ”のためなら手段を選ばないこの時代において、チーフは店を捨ててでも昔ながらの作り方をやりぬいています。昔はラードや脂、ダシなどを添加しませんでした。素材の味をどこまで引き出せるかという技が存在していたからです。でもいつの日からか”肉汁”なる言葉が一人走りしてしまい、そのために本来は不要であるはずのいろいろなものがプラスされていくようになったわけです。

といっても大げさには思わないでください。たかが餃子ですから。同じ薄皮でも昔よりちょっと粘りが弱いせいかどうも破けやすい感じがします。最初にフライパンをよく熱して油を入れたら一度火を切ってみてください。そして餃子を1センチ間隔で並べる。

ここで再び火をつけて強火に。で、ぱちぱちとはねてきますので、それをガッツ石松みたいに避けながらじっと我慢です。するとやがて煙がでだしますのでそこでようやく水を入れてください。

添加物はもちろんなし、旨みの元は肉と粗切りキャベツですので水分は元々多いです。だから加える水は思ったよりも少なめでいいです。そして蓋をしたら、後は音と匂いに注目です。中火。

数分経つとだんだん蒸気が薄れ、音が小さくて硬い感じになります。カチカチカチ。となれば弱火にして、一度蓋を開けて餃子の腹を見てください。透明になっていればOKです。白ければ蓋をしてもう少し。あるいは焦げそうであればわずかな水を入れてください。1人前ならカレースプーン1杯程度でいいです。

全体に張りがあり、透明感があり、軽くこげた感じの香ばしい匂いがあれば出来上がり。ヘラで一度めくるようにしてから、フライパンの中に皿を逆さに載せてひっくり返すようにすれば安全でしょう。

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