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2016.11.15

『スパイスジャーナル誕生秘話 ⑤スパジャー流の定期購読スタイル』

前項でスパイスジャーナルの「独自性」についてお話させていただきました。

10の項目があり、その中の「5.定期購読というスタイルで始めたこと。」「6.付録にいろんなスパイスをつけたこと。」についてここでは述べたいと思います。
 
 
「5.定期購読というスタイルで始めたこと。」のワケ

 最初は本を創り上げることが最大の壁と思っていましたが現実は違いました。平たく言えば「販路がない」。売る方法がなかったことを創り上げてから気づくというのはなかなか心臓に悪いものです。
とにかく僕は書店を渡り歩きまわるほか思いつきませんでした。そして書店のみんなが首をかしげるのです。

「取次ぎはどこですか?」

「なんじゃそりゃ???」

 少なくともまだまだ旧体制といわれた2010年3月時点では、まず話を聞いてくれる書店が5軒に1軒あるかないか。次に必ずといっていいほどこの取次ぎの話になり、恥を重ねるうちにわかってきたのがどうやらこの業界は流通が特殊だということでした。

で、これが湧いて出てきた僕なんか相手にしてもらえない。そんなだから最初の頃は既得権益に見えて邪魔にしか思えませんでした。

 こうなると「その無理を圧してでも風穴を開けていただきたい」としか思えないのが僕。そこをなんとか、と交渉して歩いているうちに書店員も色々アドバイスをくれたりしていきます。

「小さな本だから軽率に扱われるかもしれない」という意見に対し、こちらでビニールパックする手を考える。

「スパイスと言っても何のことやらイメージが沸かない」という意見に対し、ビニールの中に胡椒やクローブを一粒ずつ同梱する手を考える。

「読むほどに自分も行動したくなるのはいいけどその先の具体性が欲しい」という意見に対し、すぐに使えるスパイスを付録にする手を考え出しました。

 こういうことを積み重ねていくうちに、ついに書店で取扱をしてもらえるようになっていくわけですが、当初は年4回季刊でしたから時間的猶予はほとんどない。万が一にも数軒の書店が買ってくれても話にならないわけです。

 そこで次に思いついたのが読者ダイレクトの定期購読でした。これはもう目に入った人全員に頭を下げていくのみです。友人、知人、仕事仲間、よく行くお店、編集者。

見知らぬ人にも声をかけます。梅田の交差点で本と申込用紙を持って立ちんぼもしました。あまりにも売れないものだから、同様にオリジナルの本を立ち売りしてた人と妙に仲良くなっちゃったこともあります。

 でも、こういうことをやり続けていくうちに周囲の人たちが助けてくれることも増えました。みんながみんなを紹介してくれるようになっていったのです。

 こうしてコツコツと定期購読が増えたのはいいですが、様々な問題が容赦なく次から次へと出てきます。

年間契約でやっていたので継続手続きの方法がわからない。書店には掛率の相場というものがあり、その率で差し引くと利益がでない。さらに、受注や納品の手間隙がかかりすぎること、倉庫が必要、車はないからバイクを改造、大阪の駐車禁止取締りが厳しくなり数え切れないほどつかまったり。

 そして創刊してから3年目に次はこんなことに気付くのです。2000部を完売しても赤字になる、という事実。自分のアホさにため息も出ませんでした。スパイスジャーナル誕生物語の本が書けるかもしれません。
 
 
「6.付録にいろんなスパイスをつけたこと。」の理由と背景

 先述のようになんとか定期購読者と取扱書店が増えていったわけですが、そのときのスタイルがこれです。

 ビニール袋に何かしらのスパイスを一粒、そして毎回僕がハンドメイドで調整したカレー粉やガラムマサラなどを付録する。

 で、このスタイルが好評を得ました。やがて客によって要望が変わって行くのです。あのスパイスとこのスパイスをバラで欲しいとか、100グラム単位で別売りして欲しいとか、オリジナルのカレー粉を作って欲しいとか。当時の僕はイベントなどでオリジナルのスパイスキットなどをよく売ってましたから、それを聞きつけたお客が同様の品物を付録して欲しいとか。

 こうして購読コースも、1回本を発行するたび毎回20グラムとか30グラムとか、あるいは2回発行のつき1回の頻度で20グラムとか、さらにガラムマサラも追加セットとか、幾通りもも出来上がったのです。

 こうしていくうちにオンラインショップも立ち上げるのです。ここではスパイスジャーナルの付録あれこれと、三重県松阪時代(1998年頃)お客に育ててもらったスパイスキット各種と、最近創り上げたものなどを販売。

 ネットオンチの僕ですから、これも相当に苦労しました。いろんな人に助けられて出来上がっていったのです。ただし書店では売り方が少し変わっていきました。本そのものにスパイスをつけるのはやめて別売りとなったのです。原因はいろいろありましたが、大きな理由の一つに、お客のカバンの中にスパイスの匂いがうつったりして嫌な人も多いというのです。

 一方、定期購読者への付録スパイスはますますエスカレート。中には飲食店経営者もいて、その店のオリジナルの開発依頼をもらったこともあります。特に08号くらいまでは、スパイスのいろんなつき方の提案を掲載していました。

 09以降はたまにレシピ特集などをするなどして提案していくという形に進化しましたが、この付録スパイス期がスパイスジャーナルの柱となったことは言うまでもありません。お客一人一人の肉声がしっかりと届き、みなさんと深いコミュニケーションをとることができました。

 僕は決して始めからこれらのことを狙ってやっていたわけではありません。全部あたって砕け続けていくことでわかったことばかりです。

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