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« 熱波の冒険で痩せる宣言を撤回 | トップページ | いよいよチェンナイ郊外へ »

2017.05.07

空港も機内もアツイ

何を間違えたのか、そうでないのか、デリーでの乗り換えの際、久しぶりに多分1キロくらい走った。汗だくだ。三人ほどのインフォーメーション、銃を持ったガードマンに聞くと全員「ファースト!」

そして、やっぱりこの空港はでかすぎる。走れど走れどチケットに書いてある56ゲートが見えてこない。搭乗ゲート一つ一つの間隔がまた広い。

搭乗時間は確かにとっくに過ぎている。さっきガードマンが教えてくれた時間は13:35。と言っても、出発が14:10で搭乗は13:25なのでどうってことはないと鈍感な僕はそう思ってしまう。

ちなみにファーストって言われても道草をしていたわけではないのだ。その前のジョドプールからの到着から55分しか時間がなかったからだ。それは予定通りのフライトだった。

すっかり心臓アップアップの太もも筋肉痛間違いなしの状態である。まだか、まだか、と走ること何分かでようやくゲート56が見えてきた。

が、しかし、あと50メートルってところで道がふさがっているではないか。何かの工事をしているようだった。

ぐるっとUターンして100メートルほど戻って駆けつけるとさらに驚愕の惨状が。なんと、人の姿が見えないのである。

呆然と立ち尽くしていると、外を平和そうに眺めている1人の女性ガードマンが目にはいった。まさか万事休すか。おそるおそる尋ねてみる。

すると、46ゲートに変わったと言うではないか。吐きそうになった。再び46ゲートへ突っ走る。

そうか、今回の旅は痩せると思っていたら完全にデブになったので、神が脂肪燃焼の機会を与えてくれたのだな。

また、先の飛行機はバスみたいに小さかった上に、隣の客が2メートルもありそな大男で、一度椅子に座ったら抜け出せないようなやつだった。おかげで右肩と右膝あたりの懲りも吹っ飛んだ。

さて、ようやくのようやく、自分が行くべきゲート46に到着した。すると今度は打って変わって人だかりとなっている。

カウンターに聞くと、ほうらやっぱり遅れてるし。でもまぁなんくるなくてよかった。久しぶりのランと乾燥エアーで喉がカラカラだ。

そうだ、こういう時に小銭を消費しておこうと思い自動販売機に初トライ。が、しかし、これが5ルピー以下は使えないようなのだ。いやもしかしたら使えたか。僕は勘違いが多いからなぁ。

先からずっと背後で見ているやつがいる。どこか田舎から出てきたインド人なのかなぁ。僕がどのようにして使うのかを見たいのだな。こうなるとコインが使えないからと言って引き返すのは格好がつかない。よっしゃ行くで、とガンジーを一枚(100ルピー)入れる。

で404番のウォーター500mlをプッシュ。とよく見るとこれが10ルピー(約17円)。チャラン、チャラン、ポラーン。ゆっくりとコインが9枚落ちてきた。なんてこった、減らしたいはずのコインがまた増えてしまったではないか。僕の人生の縮図のようだな。

さっそうとコインをポケットにじゃらん。グビグビと水を飲んでいるうち搭乗が始まった。

やっと乗れた。これで後はチェンナイに着くまで悠々自適だ。

さて自分の席へと進んでいく。ゆっくりとできるように、ネットでチケットを買うとき人の少ない奥の方を選んでおいた。

すると、そこには再び悪夢のような状況が。なんと僕の席に3、4歳のクソガキが座っているではないか。その隣には7、8歳の兄弟丸出しの兄が。さらにその後ろにはもっと小さなチビとお父さんとお母さん。

おまけに通路を挟んで対岸にも同様のクソガキ3人と親らしき男女が。全員南インドの真っ黒ヒューマンだ。それにしても、ものすごい大騒ぎである。

おいコラ、そこどいたらんかい、と笑いながらやや小声で言ったその時に、奥のほうから真っ赤なバラの花のように綺麗なオネーチャンが現れた。

上下とも紺色の制服、大きな目に明るい唇。

何番ですの?
へえ、38Fですわ。
あれれ〜どうしようかしら。子供たちが…
ノノノ、EZEZ、僕は通路側でかまいまへん。
うわーお、サンキューサー!
問題ないサー‼︎

今回のインド旅の中で間違いなくベストキュートである。

それにしても大騒ぎである。インドといえども、これはさすがにNGなようで、先からオネーチャンがシートベルトとかクワイエットとかあれこれ注意している。

そしてこともあろうに、僕が下ろした肘置きを隣の兄が奪おうとしてくるのだ。ダメだ。さっきの便でもそこは取られたままだった。いくら日本人でもそこまで優しくはないのだ。

グイグイと僕の肘の前から圧してくる。こんなチビに負けてなるものか。絶対に譲らないぞ。僕は右肘をガッツリと固める。

と、そこに先ほどの大きな目のオネーチャンが再びやってきた。

あなたの名前はケンジですか?
ケンジ?イエスっ、ケンジカワムラだす。
あなた、ミールはベジラクトオーバーでよかったですのよね?
イエスイエス、アイライクベジラクト。
わかりましたのよ。あとで持ってきますねー。
ありがとねー。

その場にパーっと明るい花が咲いたようになった。

あー嬉しい。と、思ったその瞬間、隣のガキが今度は僕の肘の後ろから捻りこんできた。先から後ろのガキはバンバンと椅子の後ろを蹴り上げてくるし、僕が譲った窓側の席の弟は飛び跳ねているし、もう動物園の猿状態である。

とそこで、隣のガキが窓際のチビとケンカを始めた。嘘やろと思った直後、肘が外れた。今だ!とっぴ!

「ふっふっふ。俺の勝ち」
こうして僕は肘置きの鬩ぎ合いに勝利した。

その後、散々大騒ぎするたびスチュワーデスたちから叱られて、テイクオフ後も食事後もまた叱られている猿ども。

ついには僕が食事しているところで、一丁前にガキが綺麗な英語でエクスキューズミーサーと言って、その場を出ようとしだす。

「これこれ、俺はいま食ってる最中なんや。クソガキはやっぱりマナーがクソやのう」
さらに真後ろの父親がまたソーリーとヘラヘラ言っているのがちっとむかつく。

僕は食べている手を止め、トレイを持って立ち上がると、奥のチビも出ていき、へこへこと通路対岸の後方へ引っ越した。

「おのれら、そこが定位置やったんか。ま、どうでもええわ」と思ったら、後ろから厳しく叱る声が聞こえてきた。

振り向くとさっきのオネーチャンであった。ちゃんと子供を見てください!そこに座らせてください‼︎とマジな目で親に指示していた。

おおお、あのオネーチャンは可愛いだけでなくちゃんと大人だった。って当たり前か。

客がいなくなった僕の隣の席は、おやつや靴が散乱しまくり。後ろは依然キックし続けている。ほか周泣きわめくガキ、走り続けるガキも出てきた。どれだけ注意を受けようとも全く聞く様子のない彼ら。

30分ほどして着陸態勢に入った頃、惨劇は極みに達した。キックしながら大声で泣きわめいていた後ろのガキがいきなり吐いたのだった。ぷっはぁ〜!

えええっ⁈ もう許さん!と思いガバッと後ろを振り返ると、5メートル向こうにさっきの花みたいなオネーチャンが困った顔をして座っているのだった。

背後では父親が備え付けの紙袋を子供の口にあてがい、ハンカチで身体に付着した汚れを拭いている。

オネーチャンと目が合ってしまった僕は急に顔のこわばりが溶け、なんだかこのクソガキが可哀想にも思えた。

ま、そんなうるさいガキに揉まれるようにしながらも、僕はマイペースで原稿を書いているわけだが。

こうして約3時間のフライトは終わった。飛行機は夕方5時頃に到着。

インドは前々から着陸するやいなや、携帯電話で話し出すやつ、サインが消えてないのにベルトを外すやつ、酷いのになるとまだ動いているのに立ち上がって荷物を出すやつもいる。

僕は後ろから5列目の席。出口は後ろだった。ガキどもはもちろん、機内のあちこちから我こそはと通路が大混雑する。これじゃまるでインドの交差点だ。

案の定、追い越されてカスカスになっている僕は荷物を持ってテクテクと出口へ。すると最後の最後に、あの花のオネーチャンが立っていた。

みんなにサンキューサンキューと会釈をするが、僕が過ぎ去ろうとした瞬間だけあのでっかい目がもっとでっかくなって、「サンキューソーマッチ!」と力強く言ってくれた。

おおお、ものごっつ嬉しい。確実に僕とあのオネーチャンは心が通じ合っている。もし空港のカフェなんかで会ったなら、きっと楽しい時間を過ごせるにちがいない。

インドのエアージェットウェイという航空会社である。

そう思うとガキどもの存在は実に意義が大きかった。あいつらがウザすぎてくれたおかげで、僕はいい男になれた。

アカン、やっぱり僕はインドの熱波に犯されてしもてる。

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