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2018年10月21日の記事

歩くということ①~熊野古道取材の記録

うちのカミさんの夢は「いつか熊野古道を歩くこと」なんだそうです。大病や怪我など肉体的な壁を幾度も乗り越えてきたものの、杖が必須になって早4年になります。

日々の体調にもよるようですが、調子がいいと家から駅までの1キロを歩くことができることも。でも、行きは長い坂道になるので一気には難しいようです。

どうせ、またいつもの口だけ、と思っていたのですが、珍しく同じ言葉を聞いたのが3度目なので、あぁこれはどうやら本当なのかなと。

そこで、ふと思い出したのが、歩く取材です。僕は街でも野原でも山でも海外でも、とにかく歩き倒します。

今まで熊野古道にも、あるいはその周辺の街道の取材もおそらく10回くらい行っていて、そのうち5,6回は実際に行脚しています。しっかりと歩けていない取材は、フォトグラファーや編集者と団体行動で車移動を余儀なくされるからです。

で、その歩く取材の中でも、3、4回は自分でカメラをもって10キロ以上の距離を歩いています。写真と文章の二本立て、ジャーナリストか旅人状態ですね。

他の同業者はどうか知りませんが、多くの場合はネット、今ならSNSなんかで調べて、ちょちょいとポイントを決めてそこに行ってさくっと話聞いて、時にフォトグラファーに写真撮影させてそれで終わりってなものですが、僕の場合は最低でもその時のテーマにあわせて読者目線にこだわります。というか自然的にその発想・視点しか思いつかない。

例えば、歩く旅なら本当に歩いて旅をしながら、話を聞いたり写真を撮ったり。峠を上り下りしながら山の頂上でおにぎりを食べておいしい取材なら、その通りのことをやります。グルメ取材も同じ。例えばビジネス街のランチ特集なら、その地域へ平日と土日の両方でかけて、昼時間に人込みに埋もれて、人の流れやにおいを嗅いで歩き倒してから店を選出します。

だから、薄利多歩です。最も時代に合わないやり方かもしれませんね。でも、これだと自分に嘘をつかないですむから堂々としていられて心が健やかです。

熊野古道をちょくちょく歩いたのは世界遺産前後の、2003~2005年あたり。当時、僕が持っていたカメラはニコンFEシリーズの一眼レフでポジフィルムです。なので直射日光、高温多湿はご法度で、たくさんのフィルムや他の道具を入れるバッグと三脚を背負いながらですから、これがなかなか大変でして。

歩く、という作業はどんな賢い理屈も情報も殆んど通用しなくなるんです。正確には必要な情報だけもっておいて、それ以外は捨てたほうが楽という感じ。歩き続けるために最も必要なのは情熱。次に体力。そして僕の場合はカメラとペンになります。

原稿や掲載紙を探るのは大変ですけど、とりあえず今パソコンに入っていた原稿の一部を保管後代わりに貼っておこうと思います。
 

■街道をたどる シリーズ3 (るるぶ伊勢志摩'03~'04 P106-107)
(2003年8月の記録。媒体の体質上、エッセイ風ではなく淡々とした情報原稿となっている)

◎峠道「波田須~大吹峠~熊野」(約8キロ4時間コース)
☆ポイント  天女座(たまに開いてる!?カフェ)~竹林~大吹峠~大泊駅~松本峠~石畳~記念通り商店街~「喜楽・さんま寿司」~「志ら玉屋・甘いもん」熊野市駅

リード
 
三重、奈良、和歌山の3県を張り巡る熊野古道で代表的なのは、京の上皇などが紀伊半島を西回りした紀伊路と、東国の武士や庶民が東回りした伊勢路の二つである。共通しているのはどの道も、不浄の者や僧侶が参宮を禁じた伊勢神宮とは対照的に、身分や貴賎を問わず誰もが参ることのできた神仏同一といった熊野三山に向かっているということだ。今回は昔のままの峠道や石畳が多く残り、またリアス式海岸と20数キロも続く浜が眺望できる伊勢路経由の松本峠付近を歩く。
(熊野市観光商工課05978-9-4111)

 
古道の醍醐味、
苔むす石段の松本峠
 
 峠を歩く前にJR熊野市駅のすぐ前にある食堂、『喜楽』を尋ねる。黒潮がぶつかる熊野では脂の少ない引き締まったサンマが取れる。漁師の奥さんがそれを寿司にして、漁に出た夫の帰りを待ったというサンマ寿司。そしてもう一つ、めはり寿司も食べる。険しい山の合間で働く農家の食事で、醤油漬けの野沢菜でご飯を巻いた大きなものだ。中身は白飯、時にひじき飯だったり各家によって変わる。熊野の環境と人々の暮らしが見える2大郷土料理である。
 
 食事を終えたら、すぐの記念館通り商店街を抜け、民家の合間にある『松本峠登り口』の案内を曲がる。ここを入るとすぐに段々畑の脇道となり、急な坂や石の階段が待ち受ける。頂上までわずかなはずだが、段差の大きな階段が曲がりくねり、中々時間と体力を要する。軽装備で履きなれた靴をお勧めする。だが随所で熊野灘を眺望できるポイントもあり、爽快な気分も手に入る。
 
 やがて高い木々や梅林に包まれた道に入り、その辺りから苔の生えた石段が。これぞ熊野古道の醍醐味である。日本で最も雨量が多い熊野一帯。急斜面の山が多く、突然の土石流を避けるために、古人がこの石段を作ったのだ。一つ一つ踏むたびに、いにしえの風情が足に伝わる。
 
 そしていよいよ、頂上に到着。ここには鉄砲で撃たれたと伝わる大きな石地蔵があり、かつては寺と茶屋もあった場所である。ここをまっすぐ北へ進むとJR大泊駅に向かうが、今回は熊野灘の荒い潮が彫り上げた岩が聳える東側の鬼ヶ城へ向かうことにする。落ち葉が積もった柔らかい土道。やがて東屋風の展望台が丘の上に見えてくる。ここから見下ろす七里御浜は圧巻だ。砂利をさらう細かい音が織り成す潮騒は地面を鳴らす様な低い音で聞こえてくる。春は太陽が眩しく、夏は涼しいそよ風が吹くポイントである。
 
 先に進む。すぐそこには鬼ヶ城本城址と海が近くに見える見晴台がある。そして、この周辺は2000本もの桜が溢れ、春には花びらが乱舞する場所でもある。桜の合間を縫うように下っていく。到達したのは売店やトイレのある広場だった。目の前が鬼ヶ城である。高さ十m以上もある海食洞が1キロも続く断崖の島だ。上を見上げると尖った岩が迫り出している。崖の淵に這うように細い階段があり、この岩を一周できるようになっているが、悪天候のときは立ち入り禁止となる。岩をも砕く潮がぶつかってくるからである。鬼が住んだという神話を妙に納得してしまう。
 
 ここから一旦国道にでて、大泊駅の方へ向う。時間と体力が残っていれば、ここから2.6km先の波田須駅まで進むのもいい。その間、大吹峠には細長い竹林の道がある。熊野古道の峠には、壮大な自然の力強さと優しさの両方が入り交ざっている。
 
●喜楽 05978-5-2336
熊野市駅前の食堂。南勢で獲れる冬のサンマはさっぱりとした味。頭付きのまま背開きにし、塩漬けしたあと、ゆずなどの柑橘系のものと合わせた酢に漬けるのが熊野流。さんま寿司430円。持ち帰りは450円。めはり寿司5個入り450円。JR熊野市駅前 熊野市井戸町653-14 11時~18時 P4台
 
●松本峠
熊野市などが提案するいくつものコースの中で、駅からのアクセスが便利で、山と石畳が歩きやすく、日本の渚百選でもある七里御浜などの絶景を楽しめるのがここ。東紀州地域活性化事業推進協議会 紀北事務局(尾鷲市)05972-3-3784 紀南事務局(熊野市)05978-9-6172 熊野市観光商工課05978-9-4111
 
●大吹峠
松本峠の北側にある大吹峠には鎌倉時代のものと思われる巨石の石畳や、ヒノキや杉林ではなく古道では珍しい竹林の道がある。最寄の大泊駅や波田須駅(JR紀勢本線)は、上下線とも平均2時間に1本しか電車がないので要注意。東紀州地域活性化事業推進協議会 紀北事務局(尾鷲市)05972-3-3784 紀南事務局(熊野市)05978-9-6172 熊野市観光商工課05978-9-4111
 
●鬼ヶ城
国の名勝天然記念物。波の侵食(海食)と、幾度もの地震によって隆起してできた岩の連なり。東西片道1キロの遊歩道が続く。随所、様々な形相を見せる岩には千畳敷、神楽岩、潮吹、鬼の見張り場などと名前がつけられている。国道42号線鬼ヶ城東口バス停から徒歩5分。熊野市観光商工課05978-9-4111 入場料無料 有料駐車場あり
 
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