白胡椒はやっぱり興味深い
90年代から僕が一貫して感じていること。それはスパイスは種類の多さよりも質である、ということです。
スパイスというスパイスはない。スパイスは総称であり、それを構成するのはすべて植物だからです。つまり野菜や果物と同じと。
よく聞かれるのが、どんなスパイスが好きか、珍しいものは?とか。そこで僕が答えるのはいつもこれ。胡椒です。
なーんだ胡椒か…ってみんなつまらなさそうな顔をします(笑)。でも本当だからしょうがない。
胡椒については、僕がかつて発行していたスパイスジャーナル14丸ごと特集を組んでこともあります(在庫切れ!)。
今回は白胡椒の話をします。
日本は最近スパイスブームのようですが、どうもみなさん黒胡椒ばかりなのが気になるところ。
黒胡椒は日本のレストラン業界では元来、白胡椒の補欠的存在でした。これはどうやらヨーロッパも同じようです。
実際、今でも白胡椒の方が高価で、流通量も黒に比べてはるかに少ない。
歴史としては黒胡椒の方がかなり古いようですが、世界的に上等な料理には白胡椒を使うことが多いです。一部緑胡椒を使う国がありますが、これは生の胡椒のこと。
白の特徴は黒よりも辛みが上品で、香りは黒にはない芳醇かつ華やかな香りに満ちています。ちなみに生の緑はフルーティな酸味とほのかな甘みがあり、鮮烈でありつつもあと抜けのいい辛みが特徴的です。
品種は黒も白も同じもので加工の方法が違うだけ。緑胡椒を摘み取り、洗浄した上で天日に干したものが黒胡椒。一方の白は、真っ赤に完熟したそれをよく洗ったら水につけて醗酵させ、皮を剥いたもののこと。
若いのが黒で、完熟が白。で、面白いことに生の胡椒は若い方が辛みが上品で完熟は激しく辛いのに、完熟の白胡椒は辛みがマイルドなんです。
この理由は皮にあるようです。胡椒の辛みや風味は皮に集まっています。だから皮をむいてしまう白胡椒は結果的にマイルドになるというわけです。
ではなぜ白胡椒の方が芳醇なのでしょうか?これは醗酵に理由があります。水につけると2日くらいで醗酵し3日目には簡単に皮がむけちゃいます。
ここで乾燥させて商品にしてもいいのでしょうが、ここからもっと長い時間つけておくとさらに醗酵が進み、そのことで果実そのものが芳醇となるわけですね。
こうしてどっぷりと醗酵した白胡椒はなんとも言えない豊かな風味を持っています。この芳醇な風味を生かした料理が世界にはたくさんあります。中華のバクテーやヨーロッパのホワイトソース、ブイヤベース、シチューにも多用します。
胡椒と一言で言っても色々、たかがされど。
僕は昔よく白胡椒を使ってました。でも一時期より、安価で入手が安定的な黒胡椒を使うようになり、やがて粗挽きの魅力にとりつかれ、今では黒が主流に。
でも今あらためて、やっぱり白胡椒は深いなーと思い出し、先日カンボジアで収穫してきた赤完熟を使い、白胡椒化の実験をしているところです。
確かに3日目で皮はむけました。そしてさらに芳醇を目指してただいま継続中。目標は1ヶ月!
2/20からやっているので現在13日が経ってます。どうなるか⁈また報告します。
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