「そばうどん2021」の目玉はネパールのそば食文化!
ようやく校了しました!「そばうどん2021」(柴田書店)。
「そばうどん」とは、そばやうどんの専門業界誌で、職人や経営者、機材や材料等の関連企業、またはそれを目指す方々に向けた超真面目な本なのでありまーす。
基本的な内容は、うどんそば業界のトレンドやキーワードとなる店たちの動向、職人や店主の調理・製造技術、原料や機材の質や産地、メーカー、内装や厨房に関するあれこれなどです。ほか、そば界の権威である岩崎信也さんや著名ブロガーの連載、そば学者の井上直人さんなどの単行本も出版したり、これほどに充実した「そばうどん」専門誌は他にないのではないかと思うほどのクォリティの高さが特長の本なんです。
それもそのはずで、創刊はなんと1975年(昭和50年)という長寿本で、はっきりいって日本の「そばうどん」業界で知らない人はいない、いや知らなかったらモグリじゃない!?っていうくらいの有名な本です。
そもそも版元の柴田書店が1950年創業とごっつ長生き。16歳から飲食業界に入り、20代後半まで必死のパッチで料理を勉強し続けてきた僕でも、柴田書店といえば料理書の国内最高峰であることは知っていて、なけなしの小遣いをはたいて高価な本をいくつも買ったもので、今でも捨てられずに本棚に何冊も刺さっています。
そんな柴田書店の「そばうどん」の制作にかかわることができて、料理ライター兼料理研究家の端くれとして、これほど光栄なことはないわけであります。
とはいえ仕事ですから、浮かれているわけにはいかず、それだけ期待された本なので、めっちゃくちゃ手間暇をかけて取材進行していきます。
長いものだと一軒に、あるいはお一人に3か月を要します。何度も何度も同じ質問をするし、こちらは素人ですからわからないところはわかるまで聞きこむか、店の仕込みやそば屋なら製粉室、圃場まではりつきます。「そばうどん2020」では、長野小布施の「せきざわ」のそば畑がある奥信越栄村まで行って、2泊3日をかけ、そばの手刈りを手伝わせてもらいながら、たすきにかけたカメラ二台で撮影を続けました。
この模様は第一特集「次世代へそばをつなぐ開拓者たち」に書いています。渾身の力作です。そば屋の方以外でも、例えば二代目を継ぐ方、自家栽培をしている方、何かしらの栽培に興味のある方など幅広くの方々に読んでいただきたいです。
同企画では、ほかに京都「じん六」の今まで非公開だった京北町のそば調製工場の全容をドキュメント。大阪「なにわ翁」にはなぜ若い弟子が途切れることなく門をたたき続けるのか、に迫っています。
そういえば「そばうどん2019」の第一特集も僕が担当させていただきました。こちらは「翁達磨一門の注目5店」。僕は常々密着取材が多いので、これもまた全国を転々としながらいったい何か月かかったことやら。翁達磨とは、江戸二八そばの名人と言われる髙橋邦弘氏の屋号です。その直弟子愛弟子である期待の若手たちにとって、そば、店、仕事、仲間、師匠、修行とは一体なんなのかについてとことんお話を伺っております。これについても、そばうどんに限らず、自分の人生を考え直している人、これから社会に出ようとしている若者などにも読んでいた開きたいです。
そして今年の「そばうどん2021」の要注目特集はいくつもあるのですが、まずはこれ!と言いたいのが「世界のそば料理 ネパール編」です。今回は「ネパールの丘陵地に住む人々の伝統そば料理」をテーマとしました。当誌では珍しく紀行スタイルの特集です。実際に僕がネパール人と共にカトマンドゥのとあるレストランへ出かけて、伝統のそば料理をあれこれと食べていきます。
実際にはチベット人ともあい、チベットの食文化、生薬文化についても詳しく伺ってきたのですが、今回はあくまでネパールの話に特化しています。noteにプロローグを書いたので、よければこちらものぞいてみてください。
「ネパールの丘陵地に住む人々の伝統そば料理」プロローグ~note
他に、そば学者の井上直人先生にも密着。先生は信州大学の名誉教授で、大学内とすぐそばの2ヵ所に研究室をお持ちです。それぞれの研究室へお邪魔して、先生が発明した革命的そばマシンの開発までの道のりや研究会に参加。二日目は先生と編集者と僕と3人で、先生が開発するそばマシンを導入するそば店を巡りました。それは茅野市と佐久市。もう一店香川にもあり、こちらは後日、僕のみ取材に伺いました。さらにさらに、東京豪徳寺の超繁盛そば店主が突如岡山県北部、もうほとんど蒜山高原に越した上田善宗さんの密着取材も必見です。超繁盛店がなぜ暖簾をおろし、山陰の山奥深くへ転居してしまったのか。今何をし、これから何をしようとしているのか、に肉薄しています。
どれも、そばうどん業界者のみならず、幅広くの方々にも読み物としてぜひお勧めしたいです。