畑ふわふわ日誌vol.9 5/20 オーガニック米が流通できない理由
✨5月20日
先日、隣で畑をやっているTさんと立ち話になりました。その方も農薬を使わないオーガニック栽培で田と畑を行っています。
スエノブ師匠から「あの方は本職をもちながら原集落内の各所で手広くされているので、兼業農家と言っていいかもしれません。普段はご家族で行われていますが、田の収穫時期などはお勤めの会社のお仲間も集まって一緒にやってはります」と聞いていました。
話は、僕がジャガイモの土寄せの意味について尋ねたことから、手入れや獣害、そして米作りへと流れていきました。
「ジャガイモはなんだかんだ違う品種が流行ってますけど、ほら、アンデス原産ですから。とどのつまり乾燥した土を好むから、土寄せをすることで少しでも乾燥しやすくなっていいわけですよ。ただ、そこの畑のように平畝(*11)でやることもありますけど、ジャガイモは水分が多すぎると腐ってしまうんで、雨が多いときは要注意ですね。傾斜をつけるなどして水を流してあげないと。長雨以外にもハクビシンやタヌキ、猿もやばい。サルは同集落のもう少し南の方に出没していて、いつこっちに来るかと心配です。猪は幸い、バス通りからこちら側にはわたってきてないみたい」
スエノブテリトリーでは畝のすぐ横からコガネムシの幼虫がごそっと出てきましたが、これも害虫とのこと。
「コガネムシはもうどこにでもいすぎてキリがないからスルー。それが嫌なら薬を使うしかないですよ。農業はとにかく気候や病気、外敵はセットです。うちは昨年までは農薬なしの有機肥料で稲もやってきましたけど、雑草や害虫がもうどうにもならない。なのでスエノブさんの隣の田は有機のままだけど、他はこの化学肥料を使おうと思うんですよ。これはこの辺りの土壌に適した、品種はキヌヒカリにあわせて配合された肥料です。これを使うと速効性があるうえ、1回入れただけで最後までじわじわと効果的に利いてくれるんです」
と、車の荷台を見ると、そこにセラコートRという文字と、二けた以上のハイレベルなNPK要素が書かれた肥料がありました。
そういえば前にスエノブ師匠はこんな話をしていました。
「化学肥料の投与は有機肥料と作物の懸け橋役である土中の微生物を殺してしまうだけでなく、NPKのNチッソ分が過剰となり、作物が消費しきれず硝酸態窒素という形で土や作物の中に残留するといわれてます。これが今、発がん物質なんじゃないの、と物議をかもしています」
これについては、まだまだ僕にはわかりませんが、とにかく化学肥料は特効薬みたいなもので、有機肥料は漢方薬みたいなイメージで、現在僕はそうイメージしています。
でも肝心なのは、化学VS有機の前に、獣害や病気、気候問題、最近では人手不足などが原因で、実際に米の生産ができるのか、ということ。
Tさんのように、本職を持ちながら、少しでも安心できておいしいものを作るのだ、という志を持っている方は日本各地に大勢いることは、僕の今までの取材人生からもわかっています。が、我々がもつ無農薬や有機栽培のイメージと現実はかなりかけ離れていることも、自分が実際に畑に立つようになってから日に日に感じるようになってきました。
スエノブ師匠は言います。
「昨年、僕も勉強のために無農薬・有機栽培の米作りをしましたが並み大抵じゃなかったです。とにかく雑草が増えて増えて。ウンカも異常に多かったし。とんでもなく手間暇がかかるうえ、最終的な収量は慣行農法(通常の農薬や化学肥料を使う農法)と比べると、50%くらいになってしまいました。僕は3,4畝の面積でやっただけですが、何ヘクタールもあるような大規模農業でそんな手間暇をかけられるわけがない。
慣行農法で一反の収量はだいたい400~450キロと言われます。これがいくらになると思いますか?取引は60キロ単位で行われ、ブランド米・産地でやっと15000円以上に。通常の品種や知名度の低い産地だと13000円ほどじゃないですか。10キロ換算にすると2500~3000円までいかない程度。なので一反あたりの売り上げにすると、7倍として78000円から10万5000円あたりです。ここからコストを引いた分が純利益。
北海道は別格として、関東や東北では1ヘクタール(10反:1町)以上の営農は多くいますけど、圃場が狭すぎる近畿ではごくわずか。仮に1ヘクタールとして米の売り上げはコスト込みで1年間100万円ほどになります。慣行農法でもこの次元ですから、無農薬・有機なんて論外です。つまり日本の農業はとっくの昔に崩壊してしまってるということ。だから農家を守るために国が米の価格をコントロール(*12)してきたわけで」
唐辛子(世界一辛い品種の一つキャロライナ―リーパー)を本命とした、有機肥料と無農薬に徹底し続ける彼が言った言葉です。
稲作は日本の神道哲学!日本と日本人のための米作り!などと簡単に言えなくなってきました。
スエノブ師匠は今年、自分の田畑以外、集落内のお付き合いで米作りを3,4反するそうです。どうやら、あるご高齢の方が体力的に限界にきたということでサポートに。聞けばこちらも慣行農法でやるつもりだとか。なんとかならないものだろうか(;´∀`)
たとえば、消費者価格10㎏1万円だったら無農薬オーガニックライスできないの?!
「そうですね~最低それくらいもらわないと合いませんね。ただ、それでも僕の売り上げは1反収量200キロとしたら20万円となって3反だったら60万円でコストを引くと・・・いくらでしょう。ちょうど本命のトウガラシが忙しくなる頃で。その2,3か月間、手間暇をとられるのはちょっと」
ならば一反だけやるっていうのは!?顧客手伝い型の予約制でやっちゃうとか!除草剤も使わないんだから小まめに草取りに来てもらい、収穫はもちろん、山立て式?に天日干し。なんだったら脱穀も。唐蓑はどうやってすんの!?昼ご飯は~!??ひぇ~~~おもろそう!
「おーそれは面白いですね~!でも、もう考えてる時間はないですね。そろそろ田植えの準備をしなきゃ」(5月20日時点)
いつするの?
「遅くとも6月入ったらすぐ」
なんとかできないものか・・・。参加したいっていう人たくさんいると思うねんけどな~
(*11)平畝
畝とは野菜など作物を植えつけるために土を盛り上げたところ。野菜が育つだけのスペースを確保するために、初めに耕してから土を盛り上げる。野菜の形状や土壌の水はけの具合に合わせて畝の高さを調節する。低い平畝は5~10センチ、高い高畝は20センチ以上。僕がやらせてもらっている場所は、水はけがいい土壌だが、念のため4本とも高畝としている。通常は管理や収穫などをやりやすくするために畝ごとに作物を分けるものらしい。「でも家庭菜園だったら、ツル性かどうか、水を多く使うものかどうか、という風に分ける程度で好きなものを植えたらいいと思います」(スエノブ師匠)。
(*12)米の価格
元来、農家が育てた米はすべて政府が管理をしてきました。これは、日本には小規模農家が多いので安定して営農継続できるために保守することと、消費者に対しても安定供給していけるように作られた制度と言われます。が、1960年代から外食産業の繁栄、海外食文化の普及などに応じて、コメ食がじょじょに減り、安定より質へと価値観が変わると同時に管理体制も変わり、2004年の法改正で実質的に農家が直売できるコメの自由売買ができるようになったと言われます。現在の海外からのコメにかける関税率:490%という点からも、国が何とか国内の米作りを保守している状況が伺えます。
一般的なコメの流れ:農家→産地の農業協同組合(農協。JA)→品種ごとにまとめ卸売業者へ相対取引→価格が決まる→米穀店やスーパーなどへ小売り。よって、品種や地域によって価格は毎年変動している。
2020年産の取引価格例(農水省データ)*玄米60㎏ベース
「ゆめぴりか」(北海道)17314円
「つや姫」(山形)18620円
「天のつぶ」(福島)12700円
「コシヒカリ魚沼」(新潟)19795円
「コシヒカリ伊賀」(三重)15422円
「みずかがみ」(滋賀)15098円
「コシヒカリ」(兵庫)15203円
「ヒノヒカリ」(鹿児島)16546円
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